春は、草木が芽吹き、上へ上へとどんどん伸びていこうとします。
同じように、人間の体の中でも「上にのぼり、外に発散する」という動きが起こります。
気血のめぐりも徐々に活発になり、少し汗をかきやすくなったり、気持ちが浮き立ったりします。

健康のためには、季節のリズムに生活を合せることがなにより大切です。心も体もオープンにして、積極的に外に出かけるのが、春の正しい過ごし方といえます。

陰陽五行説によると、春は肝の季節です。
中医学でいう肝のはたらきは、「血をたくわえ、めぐらせ、精神・情緒面をコントロールする」ことと考えます。
春は肝の機能が刺激されるため、「無性にイライラする」「頭に血がのぼりやすくなる」といったような、情緒不安定や精神的な症状があわられやすくなるのです。
春になると情緒不安定になりやすいという人は、できるだけリラックスできる時間をもつことが大切です。
また、早起きをこころがけ、散歩にでかけるのもよいでしょう。芽吹き始めた木々をながめながら、朝の新鮮な空気を吸うと、肝の気のめぐりがよくなって、1日快適にすごせることでしょう。

春におすすめの食材は、肝の機能を養うクコの実、ナツメ、黒ゴマ、黒砂糖、金針菜といった食材や、発散の作用がある紫蘇、ネギ、春菊、香菜、大根、こしょうなどです。
お茶なら、香りがよく気をめぐらせる作用をもつジャスミン茶やミント茶がおすすめです。
このようなものを、主食になる穀類や良質なたんぱく質を含む豆類、肉、魚などに、少し意識して加えていくのが上手な摂りかたです。

このようなことに気をつけていれば、春に起こりやすいイライラなどの精神症状を防ぎ、ストレスに強いからだをつくることができます。

春は気血をしっかりと養い、ゆったりとすごすことをこころがけましょう。
花粉症が気になる方は、疲れをためすぎないこと、規則正しい食生活を送ることで、体の正気(防衛力)を高めることが大切です。

       ~薬剤師 鳥居英勝~