一般的な冷え性とは、「全身の冷えを感じること」ではありません。身体のほかの部分はまったく冷たさを感じない気温なのに、ある部分(特に腰背部、大腿部、四肢抹消)だけが不快な冷たさを感じることをいいます。
その要因には、自律神経、特に交感神経の機能失調を主因に、骨盤内循環障害などの抹消循環障害が関与するといわれています。
次にむくみとは、体内の水分が増えて皮膚の下にたまった状態を指します。ここで肝心なのは、冷え性とむくみが密接な関係にあるということです。冷え性になり身体の新陳代謝が悪くなると、うまく循環できなくなった水分がいわゆるサードスペース(細胞、血管内以外の場所)に滞留し、むくみが起こるのです。つまり、むくみは冷え性から併発することが多い症状なのです。
ところで冷え性もむくみも、決して「女性だけに起こる症状」ではありません。男性でも冷え症の方はいますし、長時間におよぶ立ち仕事の後などには、男女問わず足のむくみを感じることがあるはずです。では、なぜ冷え性やむくみが女性に多いのでしょうか?その原因には、女性が男性に比べて「筋肉量が少なく、熱産生が少ないこと」や、「皮下脂肪が多い」ため冷え性になりやすく、それに伴ってむくみも起こしやすいことなどが考えられます。さらに筋肉量の多い男性のむくみは一時的な場合が圧倒的である一方、女性のむくみは冷え性から改善する必要があるため改善が困難なのです。
また冷え性は若い女性に多いと思われているようですが、女性であれば各年代に見られます。本来ならば更年期前後のホルモン変化が著しい時期や、全身の機能低下が見られる老年期に比較的多い症状です。しかし、働く女性が増え、それと同時に女性も男性と同じようにストレスや生活習慣が乱れがちになったことで、冷え性は若い女性にも増えてしまったのかもしれません。
冷え性対策には筋肉を付けるために運動をすることや、食事を見直すなどの体質改善、さらには漢方薬の服用など有効な手段との1つとしてあげられます。しかし、前述のとおり疾患が原因である場合は、それぞれの病態に応じた治療が必要です。「冷え」が起こる病気は、抹消循環障害系がほとんどです。例えば動脈系の抹消循環障害としてはバージャー病(閉塞性血栓性血管炎)、閉塞性動脈硬化症、膠原病などが、静脈系の抹消循環障害としては静脈血栓症、血栓性静脈炎、静脈瘤などが考えられるほか、甲状腺機能低下症や低血圧、貧血でも「冷え」が起こります。少しでも疾患が疑われる場合は検査をおすすめします。とにかく「体質だから」といった先入観にはとらわれないように注意しましょう。
~薬剤師 鳥居英勝~