胃のトラブルの多くは、物を食べると胃から出る胃酸やペプシン(攻撃因子)と、その攻撃因子から胃壁を守る粘液や粘膜流(防御因子)のバランスが崩れたときに起こるといわれています。

胃酸が胃壁を攻撃すると、胃痛・胸やけ、むかつき、もたれといった症状が出現します。粘膜表面がただれた状態になるびらん、さらに粘膜の下のほうまで傷つくと潰瘍といってますが、胃粘膜表面には神経がないので本来びらんの状態でとまっていれば痛みは起こらないはず。ところが、今まで症状が全くなくても、医者が「あなたの胃は潰瘍の一歩手前ですね」と言ったとたん、痛みを感じ始める患者さんもいます。痛みは心理的要素が大きいのです。

胸やけは、食べ過ぎや飲み過ぎたときによく経験する症状ですが、これは胃酸が食道内に逆流して食道が刺激されたために起こる症状です。食道は通常、下部食道括約部(LES)が胃の内容物の逆流を防止していますが、LESの機能不全があったり食後一過性にLES弛緩が起こると胃の内容物と共に胃酸が逆流し、胸やけが起こると説明されています。

上腹部に感じられる不快なもたれ感は、食べ過ぎ・飲み過ぎで起こり、多くの場合は胃排泄能が正常の人より低下しています。胃排泄能の低下は器質的には異常のない萎縮性胃炎で起こることが多いのですが、酸によって胃粘膜が傷ついた場合にも起こります。

むかつきもやはり食べすぎ・飲みすぎなどで起こるほか、胃腸の器質的な病気でも起こります。

胃腸は、食べ物を消化し栄養素を吸収することで、私たちの毎日の暮らしを支えています。胃腸が正常で健全であれば、体全体に必要な栄養素が行きわたり、病気に対する抵抗力が上昇し、その結果体が本来持っている回復力が高まります。ですから、胃腸の機能を正常に保つことが健康への第一歩といえます。以上のようなトラブルが起こる原因は、40歳を過ぎると増加します。40歳からは胃に不安がない方も胃腸をいたわりましょう。

胃酸の出すぎ⇒胃炎・胃潰瘍。胃酸の不足⇒消化不良。胃酸の逆流(LESの機能不全)や胃排泄能の低下⇒胸やけ・もたれ感・むかつき

      ~薬剤師 鳥居英勝~