牛乳が必ずしも体に良い食品ではないということをご存知でしょうか。初めて知る方にとっては意外に感じる事と思います。私たちは小さい頃から、牛乳は栄養になる、カルシウムとタンパク質がたっぷりとれて体が強くなると教わってきました。当然学校給食でも毎日でてきて、何の抵抗もなく飲んで育ちました。食糧難の時代においては、栄養源として牛乳が担った役割は大きかった事と思います。ただ、食べ物が十二分に行き渡り栄養源としての存在価値が低下した今、さらに、生化学の進歩で人体での牛乳の悪い働きが分かってきた今、牛乳の価値を見直すべきではないかと考えています。

牛乳が、どんな理由で体に良くないのかを列記します。

①カルシウムとマグネシウムのバランスが悪い・・・確かに牛乳にはカルシウムが多いのですが、それに対するマグネシウムの量が1/10以下と少ない。牛乳を多飲していると、体内のカルシウムとマグネシウムのバランスが大きく崩れ、マグネシウムによるカルシウムのコントロール作用が正しく行われなくなります。そうなると、細胞が正しく機能しなくなります。

②脱灰を促進する・・・牛乳は動物性タンパク質であり、人にとっては異種蛋白です。これを摂りすぎると、体は抵抗性を働かせて酸性に傾きます。するとその酸を中和しようとして骨からカルシウムが溶け出してしまいます。骨を強くしようと思って牛乳をたくさんのむと、かえって骨がもろくなるというわけです。脱灰は、動脈硬化、神経系・運動系の不具合にもつながります。

③ホルモンの働きを乱す・・・牛乳には、子牛の発育に必要な成長ホルモンや、子牛の成長促進に関わるホルモン様物質が高濃度で含まれています。また、搾乳量促進のために人工的に投与されたホルモンや、妊娠中の牛から強制的に搾取することによる血液中の高濃度の女性ホルモンが移行することもあります。牛乳を飲むと、これらがそのまま人間の体内で成長ホルモンや女性ホルモンとして作用してしまったり、成長促進に関わるホルモン様物質の分泌を異常に促進することがわかっています。その結果、前立腺ガンや乳ガン、卵巣ガンなど、性ホルモン系のガンの発症リスクが高まる事がわかっています。

④農薬や抗生物質を取り込んでしまう・・・餌となる牧草にふりかけられた農薬が牛乳に移行している恐れがあります。また、感染症予防のために投与された抗生物質が牛乳に溶け込み、それを飲んだ人間の腸内細菌のバランスが崩れたり、耐性菌の出現につながったりしています。

⑤食性に適していない・・・日本人は、乳に含まれる乳糖という物質の消化を苦手にしています。そのため、日本人が牛乳を飲むと消化に負担がかかり、お腹がゴロゴロしたり便がゆるくなったりする乳糖不耐症が起こることが多いといわれています。また、牛乳中の未消化タンパク質による食物アレルギーが起きることがあります。さらに、未消化の牛乳成分がモルヒネのような物質に変化し、脳に重大な悪影響を及ぼすことも懸念されています。

⑥貧血のリスクが高まる(特に乳幼児)・・・牛乳には母乳の6倍ともいわれるほど大量のリン及びリン酸が含まれています。このリン酸は、食べ物の中の鉄と結びついてリン酸鉄となり、鉄の吸収を阻害してしいます。特に2歳くらいまでの子供では、鉄欠乏性貧血を起こしやすくなることが知られています。大人においても注意が必要で、鉄は赤血球の中で酸素の運搬役として働くだけでなく、神経伝達、エネルギー産生、抗酸化、解毒といった様々なシステムに不可欠なミネラルですが、このような機能にも支障をきたす恐れがあります。また、リンは体内でカルシウムと拮抗し、リン酸を過剰摂取すると血液は酸性に傾いて脱灰促進をきたすので、これらは骨をもろくしてしまいます。

      ~薬剤師 鳥居英勝~