選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)という薬があります。このお薬が、精子に影響をあたえ受精しにくくなる、即ち男性不妊の一因になる可能性があることが報告されています。
これらの薬剤についている添付文書には、『海外で実施された臨床試験において、精子特性を変化させ、受精率に影響を与える可能性が報告されている。』とのみ記載されており、確率など詳細な情報を知ることは出来ませんが、詳しい解説書によると、『この薬剤を服用すると、DNA断片化率が高くなる。投与4週目の時点で、薬剤開始前(13.8%)に比べ、30.3%と有意な増加が見られた。』とのこと。
一般に精子のDNA断片化率が30%を上回ると、不妊になる傾向が強まるとされていますが、薬剤服用前にDNA断片化率が30%以上であった被験者は全体の9.7%であったのが、投与後4週間後には50%に増加したとのこと。即ちこの原因で不妊になる確率が5倍以上に増えたということです。
※この薬剤によるDNA断片化の不具合は、薬剤の服用を中止すると元に戻るという報告もあります。
※この薬剤服用による精子のDNA断片化の理由として、化学的な作用による直接的な障害、セロトニンを介した射精能の低下に伴う劣化、ホルモンバランスの変化から造精機能が影響を受けるためなど、様々な可能性が示唆されております。今後詳細な検討が待たれるところです。
現在このお薬を服用されていて挙児を希望されている方は、主治医にその旨をお伝えになることをお勧めします。ただし、それまでの間に勝手に服薬を中断しないようになさってください。
~薬剤師 鳥居英勝~