寒くなってきたこともあり、おしっこの悩みのご相談が多くなってきました。

おしっこのトラブルには、頻尿・尿漏れ・排尿困難・残尿感などがあります。男性は尿道が長く前立腺に圧迫されているため、尿が出にくい排尿障害が起こりやすく、女性は尿道が短く筋力が弱いため、尿が漏れる蓄尿障害と細菌の膀胱への侵入による膀胱炎が起こりやすくなります。OTC医薬品は漢方薬が中心で、特別な原因が見出せない尿トラブルに有効です。代表的な漢方薬として、清心蓮子飲・八味地黄丸・猪苓湯・竜胆ンシャ肝湯・小建中湯・五淋散などがあります。

病態を分類すると次のようになります。

1、腹圧性尿失禁(咳やくしゃみなどお腹に力が入ると漏れてしまう)・・・女性に多く、妊娠・出産や加齢、肥満により骨盤底筋(膀胱・膣・尿道を支える筋肉)が弱まるために起こります。・・・治療:β2刺激薬・骨盤底筋補強手術・骨盤底筋体操・膀胱訓練

2、過活動膀胱(突然強い尿意が起こりトイレまで我慢できない。トイレが近い。)・・・様々な原因により膀胱が活動しすぎてしまい、尿があまり溜まっていないのに排尿筋が収縮し頻尿が起こります。・・・治療:平滑筋弛緩薬(女性のみOTCあり)・抗コリン薬・骨盤底筋体操・膀胱訓練

3、膀胱炎などの感染症(強い尿意が起こり、尿の濁りや残尿感、排尿痛が伴う。)・・・膀胱、尿管、尿道、腎盂などに細菌が侵入し炎症を起こすと、膀胱が過敏になり頻尿になります。長時間のトイレの我慢や、ストレスや過労による抵抗力の低下、不衛生などが原因で起こります。・・・治療:抗菌薬・初期であれば漢方薬

4、心因性頻尿(テストの前や仕事中に緊張すると、トイレが近くなる。)・・・残尿感などの他の症状が無く、検査をしても特に異常がない場合は、精神的なストレスや緊張、不安による自律神経の乱れにより頻尿になる事があります。・・・治療:抗不安薬やカウンセリング

5、前立腺肥大症(中高年男性で、尿の勢いが弱い、残尿感、トイレが近い症状がある)・・・男性には前立腺が膀胱のすぐ下にあり、これが肥大することで尿道や膀胱の出口を圧迫して、尿の通りを悪くし、膀胱を刺激します。出し切れない尿が残っているため、残尿感、頻尿の症状が現れます。・・・治療:α遮断薬・抗男性ホルモン薬・前立腺除去手術・漢方薬

いずれの場合も、冷えは禁物。身体を暖かくして冷たいものを控えることが大切。その上で、漢方薬を証に合わせて服用することで気になる症状の改善が期待できます。良くなるまでの過程で、必要であれば尿とりパットを使うなどして精神的な負担を軽くすると功を奏することがあります。

☆骨盤底筋体操:①膣、肛門をお腹に引き込むようにイメージして力を入れる。(座り、立ち、あお向け、よつんばいのいずれかの姿勢でもよい)→②身体に手を当てて、その筋肉が動いていないか確認する→③力を入れて数秒~数十秒数え、力を抜いて少し休み、また力を入れる。※毎日3ケ月以上続ける。

☆膀胱訓練:尿意を我慢する練習を短い時間から始めて、少しずつ時間を延ばしていく。最初は5分くらい我慢し、1~2ヶ月かけて最終的に2~3時間我慢できるようになれば目標達成。訓練と併せて排尿日誌をつけてみましょう。排尿日記には排尿した時間、尿の量(通常200~300ml)などを記載します。

      ~薬剤師 鳥居英勝~