ご覧になった方も多いと思いますが、先週末の夜NHKの番組で漢方が取り上げられました。
この中で、抑肝散という漢方薬によって、認知症で起こりっぽい患者さんが服用したところイライラが落ち着いた症例と、表情がこわばって足のふるえが止まらない方が服用したところそれらが和らいだ症例が紹介されました。
抑肝散は柴胡・甘草・当帰・白じゅつ・ぶく苓・釣藤鈎からなる方剤で、平肝そく風・疏肝健脾の効によって、肝欝化風のけいれん・歯ぎしり・いらいら・不眠などを解消することに用いられます。乳幼児のひきつけ・むずがり・夜泣き・歯ぎしりに対して用いられることもあります。
近年は、いらいらや気持の高ぶりを和らげる効果を期待して認知症の患者さんによく使われるようになっています。目的は、認知症の方に多く見られる興奮・イライラを取り除いて、生活の質を高めること。
興奮が落ち着いた結果として、意思表示がしやすくなったり人の話をよく聞けるようになり、表に現れる認知症の症状が和らいだように見えるかもしれません。ただ、脳自体を回復させる薬ではないことを認識しておく必要があります。
また、ふるえに運用する場合には、詳細な弁証が必要です。漢方には、標治と本治という考え方があります。標治とは表面に出ている症状を和らげること、本治とは症状が出るに至った原因を整えること。
抑肝散は、標治にも本治にも働く方剤ですが、運用する場合には詳しい弁証が必要です。また、ふるえにはいろいろなタイプがあるので、全ての方に合うわけではありません。
認知症で服用する場合でもふるえで服用する場合でも、専門家の客観的な判断を受けてから服用することをお勧めします。
~薬剤師 鳥居英勝~