昨日は夜泣きの対応について述べましたが、それに続けて『あがり』について考えてみます。『人前で話すときにあがってしまう』や『大事なときにあがって緊張しすぎてしまう』などが、悩みとまではなっていなくても何とかしたいと思っている方は結構多く、当店でもたまに相談をお受けします。

あがることへの対応として、漢方的には証に合せて肝を通したり、心を整えたり、それと合せて脾や腎を補ったりということが基本の対応になると考えています。それとは別に、感情で何とかコントロールする方法はないでしょうか?

私は、『あがること=考えて恐れてしまうこと』といえると思います。そういえば以前読んだ本に、『不安を感じる前に動け!』と書いてあって、なるほどと思ったことがあります。確か、アラブの商人の伝記だったと記憶しています。

とはいっても、感情はそう単純なものではありません。準備の段階から色々考えているうちに、不安になって、それが過ぎるとあがりになる。

ここで気付いたことがあります。あがりのメカニズムが、考え(思う)て不安(恐れ)になることであれば、それらと関わる臓腑すなわち“思う=脾、恐れ=腎”を強めれば何とかなるのではないでしょうか?

大事なことを前にして、無心でいるなんて凡人にはできません。よっぽど場慣れしていたり、達観していない限り無理でしょう。そのような境地に至るまでの支えとして、日頃から大事なときにそなえて脾と腎を強くしておくと良いと考えられます。

脾・腎を補う漢方の方剤は、日本にも何種類かあります。また、漢方以外の基礎薬といわれるものも、脾と腎を強める支えになるでしょう。

       ~薬剤師 鳥居英勝~