食べ物の形とその効用を調べると面白ことがわかります。

このところ連続して載せている『補腎』に働くといわれている食材の一つに、クルミの実があります。クルミの実は、良く見ると『脳みそ』や『陰嚢』に似ていないでしょうか? 脳みそは脳髄、陰嚢は生殖器ですから、ともに腎が司るところです。まさに『クルミの形=脳・陰嚢⇒腎』がつながります。

このように、ものの形からその効用を連想するのは、実は食養生の基本なんだそうです。形をみて、この食べ物は何に効くかを想像して、試してみる。結果が良ければ、最初は想像だったことが事実になるということ。

今から15~6年前に、ある中医師が『みかんの渋皮は血管が張り巡るようだから、そっち方面で利用できそうだ』と語っていたのを覚えています。その時はそんなものかな~と軽く聞き流していました。が、今ではみかんの渋皮にはヘスペリジン(ビタミンP)がたくさん含まれていて、この物質には血流を良くする働きがあることがわかっています。そして、現在ヘスペリジンを含有した健康食品が多く出来ています。

このように、最初は想像から始まった経験則だったり、もっと単純な日常生活から見出された経験則が事実化したことが、後になってその根拠が科学的に証明される。これが食養生の成り立ちのようです。おそらく新薬の開発も、長い歴史の中でこのような経緯から得られた『経験』からヒントを得ているところも多いのではないでしょうか?

『ものの形から作用を想像する。科学的な根拠は後からついてくる。』柔軟な発想が大切ですね。

~薬剤師 鳥居英勝~