漢方医の触診の技、手袋型センサーで可視化へ。ベテランの医師が患者の腹部を触り、硬い・軟らかいと判定した圧力値の範囲を算出し、・・・。何やかんやで、経験が浅い若手医師が診断する際の判断に役立てると同時に、ベテラン医師の触診のスキルを伝承するということらしい。

便利だなと思う反面、どうなんだろうとうなってしまいます。

若いころベテランの中医師の元で学んでいた時に、脈診について『あなたがそうかんじたら、そうだと判断して良い。』と教わったものです。(脈診:脈の特徴を知ることで全身の状態を推察する方法)

『治すことを山の頂上に登ることとすれば、こちらから登るルートもあれば、向こう側から登るルートもある。最終的に登れれば良い。』という言葉があります。『治療家によって、判断の仕方や治し方は色々ある』ということです。

脈をはかる、お腹の硬さをはかるなどの触診は、望問聞切の四診の一つで、診断の際の重要な要素です。臨床家は、『触る』以外の診断方法を加味してトータルで判断して、弁証します。

表題の技術は、硬さを数値化することによって、硬い、少し硬い、軟らかいなど、お腹の硬さを機械によって確定させてしまいます。漢方的な診断の際に重要な『触診』の部分で、判断を数値化による判定に頼ってしまうと、柔軟なきめの細かい判断と対応が出来なくなるのではと懸念します。

若いお医者さんにとっても、スキルを身に着けることのかえって妨げになってしまうのではないかとも思います。この技術が、結局便利なようで便利ではないということにならなければ良いのですが。

~薬剤師 鳥居英勝~