『生理が数ヶ月ない』ことを、中医学では閉経といいます。
ここでは、加齢により生理が来なくなる“閉経”は含みません。また、数ヶ月に1回生理がくることが正常リズムな方もおられるので、それも区別します。

閉経のタイプは、大きく次の5つに分けられます。
①脾虚型・・・消化吸収や水分の代謝にかかわる臓器が弱っているタイプ
②腎虚型・・・先天的あるいは何らかのストレスにより、身体のエネルギーの源である腎が弱ったタイプ
③血虚型・・・血液が不足したタイプ
④気滞血お型・・・気のめぐりが悪くなり、血が滞ったタイプ
⑤寒湿凝滞型・・・冷えと余分な水分が身体の中に溜まっているタイプ

それぞれの特徴的な症状は・・・
①食欲がない、お腹が張る、便がゆるい、食べても味を感じにくい、顔色が黄色く白っぽい、気持ちも身体も疲れている、手足が冷える、むくみがある、どきどきする
②初潮が来るべきときに来ない、初潮が来ても量が少なく次第に無月経になる、眩暈、耳鳴り、腰がだるく足に力が入らない、頻尿
③顔色が萎えた黄色、めまい、どきどきする、不眠、大便が乾燥 
ひどくなると:両頬が赤くなる、手のひらと足の裏があつくなる、寝汗、どきどきして眠れない、皮膚が乾燥する、血の混ざる咳が出る、咳が止まらない、唇が紅くなる
④いらいらして怒りっぽい、憂鬱、下腹部に脹痛があって押すと痛い、胸が詰まる感じで脇の方が痛む、
⑤下腹部が冷えて痛む、胸が苦しい、身体と手足が冷える、便が緩い、顔色は青白い、気持ち悪い、白い下り物がたくさん出る

舌の状態は・・・
①淡い、白くて厚い苔がある
②淡い、苔が薄い
③淡い、苔がない
④舌のふちに黒い斑点がある
⑤暗い、白くて厚い苔がある

脈の状態は・・・
①緩弱
②沈細
③細緩ひどくなると細数
④沈弦
⑤沈緊あるいは濡緩

治療方針は・・・
①補脾益気・養血調経・・・消化吸収に関わる臓腑を元気にして、血を増やし血の巡りを整える
②補腎気・調衝任・・・腎を元気にし、血のめぐりを整える
③補血・・・血を補う
④行気活血・去お通経・・・気と血のめぐりをよくして、血の滞りをなくし、血の通りをよくする
⑤温経散寒・和血凝滞(寒に傾く時)・・・血を温め、滞りをなくす。
燥湿化濁・理気行滞(湿に傾く時)・・・湿気をとり、気のめぐりをよくする。

方剤は・・・
①参苓白じゅつ散加当帰川きゅう
②固陰煎加牛膝当帰
③小営煎
④膈下逐お湯
⑤温経湯(寒に傾く時)、丹渓治湿痰方(湿に傾く時)

『数ヶ月生理が来ない状態』。元々そういう体質でない限りこの状態は正常ではありません。放っておくと、不妊症や更年期症状が強く出ることにつながることもあります。漢方薬を上手に使い、必要な場合は『漢方薬による周期療法』も取り入れて、正常なリズムを取り戻すと良いでしょう。

       ~国際認定中医師 鳥居英勝 ~