『寒けを感じ寒冷を嫌う』ことは、外感・内傷をとわず良くみられる症状です。歴代の文献では、『畏悪風感』や『悪寒』と称されています。
よく風邪の引き始めに寒気を感じることがありますが、これも悪寒の症状です。
悪寒は大きく次の7つに分類されます。
①風寒束表・・・風寒の邪が体表部に進入し、衛陽を欝閉するためにおこる症状です。
②寒中少陰・・・寒邪が虚に乗じて直接身体の深部に侵入するために起こる症状です。
③陽虚陰盛・・・過労や慢性病による消耗で臓腑の機能が衰え、陰寒が生じることによっておこる症状です。
④陽盛格陰・・・邪熱が裏に深く入り込んで陽気が閉じ込められ、陽気が外部に達することができないためにおこる症状です。
⑤痰飲内停・・・痰飲が停滞しておこる症状です。
⑥そう瘍・・・火熱の邪の外感、脂っぽいものや味の濃いものの食べすぎ、外傷などによって、熱邪が停滞して経絡を塞ぐためにおこる症状です。
⑦寒げき・・・元々陽が虚していて湿が溜まりやすい体質の人が、げき邪を受けて、陽気の流れが障害されることによっておこる症状です。
それぞれの特徴は・・・
①悪寒、発熱、無汗、頭痛、身体痛、口渇がない、舌苔が薄白、脈が浮緊
②悪寒、発熱がない、全身倦怠感、四肢が冷える、元気がない、嘔吐、不消化下痢、尿が薄く量が多い、舌苔が淡、舌苔は薄、脈が沈
③悪寒、四肢の冷え、倦怠無力感、話すのがおっくう、味がない、口渇がない、尿色がうすい、泥状~水様便、顔色が白い、舌質が淡、脈が沈遅で無力
④悪寒、四肢の冷え、口渇がつよくよく冷たいものを飲みたがる、胸が熱苦しい、腹部に他覚的な灼熱感がある、咽の乾燥感、口臭、尿が濃い、便秘、舌質が紅、舌苔が黄、脈が沈伏
⑤悪寒、肢体がだるい、胸や腹が張って苦しい、食欲不振、口渇はあるが飲みたくない、舌苔がじ・脈が滑
⑥悪寒、甚だしければ悪寒戦慄、発熱、そう瘍局所の腫脹疼痛と熱感、尿が濃い、便秘、舌苔が黄、脈は弦数あるいは洪数
⑦間歇的な悪寒の発作があり、発熱がないか微熱、疲労倦怠感、胸脇部のひ満感、舌苔は白じ、脈は弦遅
治療方針は・・・
①辛温解表・発散風寒
②扶陽抑陰
③温陽散寒
④清裏しゃ熱
⑤通陽化痰
⑥清熱しゃ火解毒
⑦散寒たいげき
使用する方剤は・・・
①麻黄湯加減
②四逆湯
③右帰飲、理中湯、桂枝甘草湯
④白虎湯、じょう気湯
⑤苓桂じゅつ甘湯、甘遂半夏湯、大青竜湯、小青竜湯、木防己湯
⑥五味消毒飲、仙方活命飲
⑦柴胡桂枝湯加常山・草果
この様に、『寒け』のタイプは色々あります。弁証により正しく証を把握し、適切な方剤を利用して対処することが大切です。
~国際認定中医師 鳥居英勝~