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ここ数日、『補腎』のことを紹介しています。ざっくり分類すると、腎には腎陽と腎陰があり、それぞれ機能と器質を担っています。例えば、高齢者に多く見られる夜間頻尿は機能的なトラブルということができますが、これは腎気虚や腎陽虚によるものと考えます。また、髪が抜ける・歯が弱い・骨がもろい・脳が弱いなど器質的なトラブルは腎陰虚によるものと考えます。☆腎に限らず気血陰陽は密接に絡み合っているので、臨床では程度の差こそあれ陰陽両方に問題があることが多いものです。

ふと、『亀板(きばん)の一件』を思いだしました。亀板とは、亀の甲羅を煮詰めて固めたもので、代表的な補腎陰剤です。色は真っ黒。独特の方法で煎じて服用します。先日、『黒い食べ物は腎を補う』と記しましたが、この亀板はまさにその通りです。

今から20年以上も前のことですが、この亀板を中国南部の南寧市というところにある生薬市場で見つけ、お土産に持って帰ってきたことがあります。帰国後さっそく薄毛を気にしている知人に差し上げたところ、いそぎ箱から出してそのままくわえだしてしまいました。どうなるかしばらくみていたら、亀板は一向に溶ける気配がなく表面が少し滑らかになる程度。そんな飲み方をしても意味がないんだけどなと思いながらも、しばし見守っていたのを思い出します。数か月後に会ったところ、やはり効き目はなかったようです。

☆実際に、十分な栄養をとりながら身体に合わせた補腎を行うと髪がしっかりしてきます。新しい毛が生えるかどうかはわかりませんが、とにかく髪が強くなって元気になることは間違いありません。強くなるんということは毛根もしっかりするということ。きっと抜けにくくもなるだろうと思います。☆

~薬剤師 鳥居英勝~

先日ここで、『東洋医学的には、補腎することがアンチエイジングにつながる』ことを説明しました。そこで今日は、具体的な『補腎策』について述べたいと思います。

腎を補うには、何といっても第一に、漢方薬の補腎剤を服用することがてっとり早い方法です。補腎剤としては、八味地黄丸・六味地黄丸などがよく知られていますが、他にもいくつもあります。身体に合ったものを、じっくりと続けることが大切です。また、強壮生薬といわれるものには補腎剤が多く、それらが配合された栄養剤も助けになると思います。

そして忘れちゃいけないのは毎日の養生です。精根尽き果てるなどといいますが疲れすぎは腎精を消耗してしまうので要注意。栄養不足もよくありません。房事過多(性生活のし過ぎ)も腎を傷めるので用心する必要があります。腰を冷やすのもよくありません。要するに、頑張り過ぎず・あたたかくして・ちゃんと栄養を摂っていれば大丈夫ということです。

また、薬膳では黒い食べもの(黒ゴマ・黒豆・木耳など)は腎を補うと言われています。それらを積極的に摂ると良いでしょう。

☆腎は生殖器を司るところですので、これが虚すると男性女性を問わず不妊症の原因になります。特に若いころに不摂生をした人などは、腎が消耗し生殖機能が落ちていることも考えられます。子宝相談でも、腎虚のケアーは重要な要素になります。☆

~薬剤師 鳥居英勝~

今朝のNHKのニュース番組で気になる報道がありました。それは、『学生の女性スポーツ選手にアンケートを取ったところ、無月経から疲労骨折に至るケースが多い。原因として、過度なダイエットが考えられる』というもの。陸上の長距離選手など、激しい減量を要するスポーツ選手には多く見られる一方で、バレーボールなどダイエットの必要がない競技に取り組む選手では割合が少なかったと解説されていました。

これを東洋医学的に分析すると、次のようになります。過度なダイエット=気血を消耗する⇒さらに激しいトレーニング⇒さらに気血が消耗・・・ここで栄養と休息をとって養生しなければいけないところで無理を重ねると⇒気血が回復せずむしろ陽気陰液を損耗⇒腎精が虚してしまう。

腎はホルモン、生殖器、骨を司ると考えます。無月経はまさにホルモンバランスの崩れからの生殖器のトラブルですし、疲労骨折は女性ホルモンによる骨を守る力が弱まることによる骨密度低下によるものです。共に腎虚で起きる症状です。

このように、『過度なダイエット+激しい運動をする選手が、無月経から疲労骨折に至ること』は、東洋医学的にはきれいに説明がついてしまいます。さて、問題はこのような症状に至った方たちが、今後どのような経過を辿るかということです。

月経のトラブルがあるわけですから不妊症に至ること、骨密度低下があるわけですから骨粗しょう症になりやすいこと、このことは容易に想像がつきます。さらに怖いのは、頭の働きの低下です。腎精不足で現れる症状には段階があります。最初はホルモンバランスの崩れによる月経の異常など機能的トラブル、次の段階では骨密度低下など器質的トラブル、そして器質的トラブルの最後には脳の働きの低下がまっています。すなわち、放っておくと集中力低下や学習能力の低下、ゆくゆくは認知機能の低下になりかねません。

若いスポーツ選手は、今が大事で結果を求める。これは当然のことです。若さゆえ怖いもの知らず、何年もあとの体のことは、気になっても今を優先してしまう。それはわかります。ただ、『後々の健康のために、栄養と休息がとても大切である』ことは認識してもらいたいと思います。このことは、選手を指導する立場の人が着目して、指導すべきことかも知れません。

無理をしてひどくなってからでは、手遅れになる場合もあります。生理機能の不具合や骨密度低下は、ホルモン剤や骨粗しょう症薬を飲んでもなかなか正常にはもどらないことも多いようです。早い時点での養生が何よりも大切です。

☆スポーツ選手に限らず、過度なダイエットをすることは同じ経過を辿ることになりかねません。注意が必要です。☆

☆☆☆不具合を起こさないための予防、起こしてしまった後のケアーには、東洋医学的治療が功を奏すると考えられます。消耗しそうな、あるいは消耗してしまったもの(気血陰陽)を補い、栄養素をしっかりとる。もちろん毎日の食事と休息も大事。これらが基礎となります。必要な場合には、そこに治療薬が合わされば相乗効果が得られるでしょう。何度も言いますが、早い時点からの養生が大切です。☆☆☆

~薬剤師 鳥居英勝~

年を取ると老化するのは当然のことで、どうやったって止めることはできません。ただ、遅らせることは可能かもしれません。アンチエイジングについて、東洋医学的な解釈をしてみたいと思います。

東洋医学では『老化=腎の虚衰』であると考えます。例えば認知機能の低下・腰の弱りなど、加齢や老化に伴って起こる症状は、腎虚によるものと考えます。実際そのような症状に対して適切に補腎を行うと、改善することが多いのも事実です。

以前ここで、『人間には先天の精と後天の精がある。先天の精は生まれ持ったもので両親から授かったもの。後天の精は生まれてから飲食によって得た栄養などによるもの。』と紹介したことがあります。その先天の精は、=腎精と言い表すこともできます。東洋医学でいうところの腎とは、生命活動の基礎になるとても重要なものです。アンチエイジングの基本は、補腎することであるということができます。

☆臨床では、腎は大きく腎陽(機能)と腎陰(実質)に分けて考えます(この他に腎気という概念もあります)。腎虚に基づく症状がある場合には、必要に応じて補腎陽・補腎陰など補腎を施します。具体的にいうと、体温が低く腰が弱い・夜何度もおしっこに起きるなど・・・、このような方は腎陽を補うと功を奏することが多くみられます。また、髪が抜けたり白髪になったり・歯が抜けたり・目や口が乾いたり、このような方には腎陰を補うと整うことが多くあります。※東洋医学でいうところの腎と西洋医学的にいう腎臓とは、ちょっと意味合いが異なります。☆

~薬剤師 鳥居英勝~

2月に、アロパノール内服液という漢方薬のことをご紹介しました。アロパノール内服液は『日本初の液体の抑肝散』で、吸収率が抜群。『あがり症』の方に功を奏するといわれています。

抑肝散は元々、『神経が高ぶって怒りっぽい方の、神経症・不眠・歯ぎしり』などに使われる漢方薬です。ここ数年は、『認知症の方のイライラを和らげる』ことに多く使われています。※あくまでも認知症の随伴症状であるイライラを改善するのが働きであって、認知症自体を改善する効果がわかっているわけではありません。また、『原因が不明の手足の振るえ』にも効果があることがわかっています。

さて、抑肝散とあがり症の関係です。あがり方にも色々あると思います。人前で話すときに、顔が赤くなってしまう、汗をかいてしまう、言葉が出ない、声がふるえてしまう、手足がふるえる、大事な試合の時に緊張してしまい実力が発揮できないなど、人によっても違うし状況によっても異なるでしょう。

では、どんなあがり方に対して効果が高いと考えられるでしょうか? 抑肝散は元々、気持ちの高ぶりを和らげるお薬であること、そして近年では原因不明の振るえを和らげる効果がわかっていること。この二つから、私は『緊張して、声や手足が震えるタイプのあがり』に効果が期待できるのではないかと考え、そのような方に試して頂きました。症例数は多くないのですが、結果は予想通り効果大でした。

緊張して、スピーチの時に声が震えたり、大事な時に手や足が震える方には、是非お試しいただきたいお薬です。

~薬剤師 鳥居英勝~

昨日、「低体重児=先天の精不足(腎精不足)→腎虚であり、この場合後天の精を補う必要がある。そのカギは補脾にある。」ことを述べました。実際には、生まれながらに腎虚であり、あわせて脾虚であることもみられます。子供にみられる腎虚・脾虚の特徴は、

腎虚:発育が遅い、脳の発達が悪い、髪や歯の成長が遅いなど

脾虚:手足が細い、消化器系が弱いなど

この場合の対応としては、まず毎日の栄養を充実させることが大切だと思います。脾虚体質ですと、消化器系が弱くて消化吸収が悪いことが考えられますので、バランスよく吸収が良いことに注意する必要があります。冷たいものの取りすぎは良くありません。小さいうちからこのことに注意しておけば、自然と後天の精が養われ、脾も充実してきます。そして、不足している先天の精(腎精)を支えることにつながります。

また、人参を主にした漢方薬は脾を丈夫にします。アミノ酸製剤も直接栄養になるし、身体を充実させるのに役立ちます。これらを上手に取り入れると良いでしょう。

毎日の養生を続けていけば、生まれたときに腎虚と脾虚があっても、自然に順調に成長してくれるはずです。

~薬剤師 鳥居英勝~

昨日は夜泣きの対応について述べましたが、それに続けて『あがり』について考えてみます。『人前で話すときにあがってしまう』や『大事なときにあがって緊張しすぎてしまう』などが、悩みとまではなっていなくても何とかしたいと思っている方は結構多く、当店でもたまに相談をお受けします。

あがることへの対応として、漢方的には証に合せて肝を通したり、心を整えたり、それと合せて脾や腎を補ったりということが基本の対応になると考えています。それとは別に、感情で何とかコントロールする方法はないでしょうか?

私は、『あがること=考えて恐れてしまうこと』といえると思います。そういえば以前読んだ本に、『不安を感じる前に動け!』と書いてあって、なるほどと思ったことがあります。確か、アラブの商人の伝記だったと記憶しています。

とはいっても、感情はそう単純なものではありません。準備の段階から色々考えているうちに、不安になって、それが過ぎるとあがりになる。

ここで気付いたことがあります。あがりのメカニズムが、考え(思う)て不安(恐れ)になることであれば、それらと関わる臓腑すなわち“思う=脾、恐れ=腎”を強めれば何とかなるのではないでしょうか?

大事なことを前にして、無心でいるなんて凡人にはできません。よっぽど場慣れしていたり、達観していない限り無理でしょう。そのような境地に至るまでの支えとして、日頃から大事なときにそなえて脾と腎を強くしておくと良いと考えられます。

脾・腎を補う漢方の方剤は、日本にも何種類かあります。また、漢方以外の基礎薬といわれるものも、脾と腎を強める支えになるでしょう。

       ~薬剤師 鳥居英勝~

あがり症の方におすすめのお薬があります。アロパノール内服液という漢方製剤です。

アロパノールは抑肝散という方剤のお薬です。抑肝散という漢方薬は、これまでも色々なメーカーから発売されているのですが、アロパノール内服液は日本初の液体の抑肝散製剤です。液体なので、吸収率抜群。即効性があります。

人前で話すときや、会議、試合の前など、だれでも緊張するものです。適度な緊張は必要なことですが、緊張し過ぎるのは何とかしなければいけません。

大事な時にあがってしまう方、大切な時に十分に実力を発揮したいとお思いの方、ここ一番というときに試してみてはいかがでしょうか?

【アロパノール内服液:30ml×3本入(1日分又は3回分) 1,575円】

効能・効果:体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、歯ぎしり、更年期障害、血の道症。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

インフルエンザが流行しています。今年の主流はA型のようです。

さて、インフルエンザの予防として、日頃の養生・うがい・手洗い・予防接種が大事であることはいうまでもありませんが、いざ家族が罹ってしまった場合に家庭内で感染が拡がるのを防ぐためにはどうしたら良いでしょうか。私は次のことが大切だと思います。

①全員マスク着用②出来るだけ接触を避ける③罹った人が使用した食器の除菌④病人が使用したティッシュなどを密閉して破棄する④二塩化酸素製剤の室内えの噴霧⑤携帯用二塩化酸素製剤の使用及びマスクへの噴霧⑥加湿

これらが生活する上での注意となるのではないでしょうか。

また、お医者さんの処方箋が必要になりますが、条件に適えばタミフルを予防的に服用することも効果あり。市販で手に入るものとして、葛根湯、麻黄湯、麻黄附子細辛湯も、万が一感染した場合に症状が出始めてからすぐに服用すると治るのがグーッと早まります。

実際5歳になるわが子にも、周りに罹った子がいてインフルエンザの感染が疑われたとき(急な寒気を訴え始めたとき。この時はまだ熱は出ていなかった)に葛根湯を成人量服用させたところ、顔が一気に赤らんで速やかに寒気が消失したことがあります。まさに辛温解表にて邪気を吹っ飛ばしたかのよう。このときはインフルエンザを発症せずに済みました。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

インフルエンザに注意しなければならない季節です。

漢方薬では、麻黄湯や銀ぎょう解毒丸に、ウイルス増殖抑制効果があることがわかっています。これらの抑制作用は、流行年代の新しいウイルスに対していえばタミフルをしのぐと評価されています。これらは、服用した場合ではなく煎じ液や成分を用いて試験管内で行った実験によるものです。

漢方薬は、体内で様々な作用を及ぼし科学的に解明されていない作用をもって効果を発揮するものですが、今回の実験ではあくまで試験管内ではありますが、漢方薬自体にインフルエンザウイルスを抑える効果があることが証明されたもので、画期的だと思います。また、インフルエンザを発症したときの証と、これらの漢方薬が適応となる証が一致していることも面白いことだと思います。

インフルエンザにかかったかなと思ったら、その時点での悪寒、発熱の進展と程度、汗の出方、体の痛みをみながら、適当な漢方薬を選択して服用すると功を奏することが期待できそうです。

一方で、これまでインフルエンザ予防に良いとされていた板藍根については、これ自体の煎じ液にはインフルエンザ増殖抑制効果はないことがわかったとのこと。ただし、板藍根はお茶としてうがい用としてのどの洗浄に用いることが多く、その様に使用した場合にはウイルスや細菌を洗い流すのには有効。また、服用した際には試験管内の実験では確認できない抗ウイルス作用があることは否定できません。

      ~薬剤師 鳥居英勝~