» 漢方情報のブログ記事

先日このブログにて、今年の秋~冬にかけては肺と肌の乾燥に注意が必要であると記しました。夏の盛りもすぎ、刺すような日差しが和らいだ今、肺の乾きによる乾咳と、皮膚の乾燥による肌荒れ・カユミでのご相談が多くなってきたように感じます。

乾咳のケアーで重要なことは、とにかく潤すこと。マスク着用、加湿器で部屋の湿度を保つと良いようです。麦門冬湯という漢方薬も、肺を潤してくれるので乾咳を和らげるのに有効です。

皮膚の乾燥に対しては、とにかく保湿が大切です。お風呂上り直後の体が潤っている時に、ローションやクリームで保湿をしましょう。これを続けていくだけでも皮膚は整い、カユミも出なくなってきます。お風呂では、あかすりなどでごしごし洗うことは禁物です。石ケンを良く泡立てて、その泡でやさしく洗いましょう。漢方薬では当帰飲子というお薬が肌を潤す代表的な方剤です。乾燥していてカユミがあり、どんな薬を塗っても一時的な効果しかなく、カユミを繰り返す皮膚炎が、この漢方薬ですっかり良くなった方もいらっしゃいます。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

気随血脱・・・出血に伴って元気も出て行ってしまうこと。これは、大量出血のときに必ず見られる状態です。

大量出血に限らず、元々貧血傾向にある女性が生理で出血した際に見られることもあります。その場合の具体的な症状は、生理時に元気がない、立ちくらみ、目眩、お腹を手で覆うと気持ちがよく感じるような生理痛。

このような方は、血虚あるいは気血両虚タイプ。平素から血と気を補うことが大切です。漢方薬やアミノ酸製剤が効果的。食養生として、羊の肉、牛肉、鶏肉も血を増やすことが知られています。

血虚かどうかの目安は、脈が細い、舌の色が淡白、舌瞼をめくると白っぽい、爪を押すと血の色が戻るのが遅い、経血がうすいなど。気虚の代表的な症状は疲れやすいこと。このような方は、積極的に体質改善されることをおすすめします。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

原因と症状及び体質によって、いろいろな方剤が考えられます。

主な原因は、冷え、おしっこを我慢した、不衛生でバイキンが入ったなど。

一度膀胱炎になると繰り返すいわれますが、これは間違い。正しくは、膀胱炎になり易い体質のせいで、何度も起こしてしまうというべきでしょう。なりやすい体質というのは、気の不足、陰液の不足。※体力十分であっても場合によってはなる場合もあります。

代表的な症状は、痛み、発熱、残尿感、すっきり出ないなど。

それらを全体的にみながら、清熱解毒、利水、補気、補陰などの方剤を用います。(状態によっては抗菌剤が必要な場合もあります。)

通常5日~1週間位で緩解しますが、それより早く楽になった場合でも10日位は漢方薬を服用することが大切。そうすることで、完全に抑えることが出来ます。また、その間、体を温かくして、温かい飲み物を多く摂ると良いでしょう。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

黄斑変性症という目の病気が増えています。見ようとするものがゆがんだり、中心部がぼやけてしまい、視界が狭くなる病気です。原因は、目の中心部にある、直径2mの黄斑部が、老化により機能が低下することにより起こります。これには萎縮型(乾燥型)と滲出型(新生血管型)の2つあります。滲出型における黄斑変性症は、栄養を取り次ぐ網膜色素上皮細胞が老化して、新生血管が発生します。この新生血管はもろいため、すぐに破れて網膜色素細胞の機能をこわしてしまいます。この出血を繰り返すことで視力が大幅に下がり、放置しておくと視力を失うことがあります。乾燥型は、黄斑部網膜が変色する病気です。この原因は、動脈硬化による血流の低下と考えられます。

黄斑変性症に対して、漢方では田七人参を用います。田七人参は、血をサラサラにすることと、血管外へ血がもれることを防ぐという相反する二つの作用を持っています。これにより、出血を抑えながら血液の流れを良くする効果が期待できます。また、乾燥型の場合には血流を良くするために活血剤を併用すると効果的です。※滲出型の場合も、状態によっては活血剤を併せることもあります。

   ~薬剤師 鳥居英勝~

歯槽膿漏、蓄膿症、おできなどの膿をもった炎症性の疾患にも漢方薬は有効です。その場合には『清熱解毒』という治法をとります。もしも、素体が虚している場合には、正気を補うことを合わせ、『扶正去邪』を行います。

すなわち扶正により正気を高めることで体の抵抗力を高め、かつ悪いものを外へ出す力を高めることと、去邪により悪いものを外へ出し、やっつけることにより症状を快方に向かわせます。

この扶正去邪という治法は、膀胱炎の対処でも有効です。

程度によっては抗生剤や外科的な治療が必要な場合もあります。 

      ~薬剤師 鳥居英勝~

認知症に効く漢方薬にはどのようなものがあるかご紹介します。

大きく分けて、認知症には脳血管性とアルツハイマー性の2つの病態があります。

脳血管性の対応としては血流を良くすることが最重要。そのためには活血剤が有効です。特に頭に血液を通す作用のあるセンキュウやカッコンなどを含む方剤を適用するとよいでしょう。また、イチョウ葉エキスやタンジン製剤も血液をサラサラにする作用があるので有効です。

アルツハイマー性の場合、漢方での対応は今のところ難しいと思われます。大事になるのはアミロイドβ対策。アミロイドβは、高血糖・高コレステロール血症下において増えやすくなるといわれているので、そちらへの対応が必要。

以前テレビで抑肝散という漢方薬が取り上げられ、その直後は多くの問い合わせを受けました。抑肝散の働きは怒りの緩和。認知症の進行をおさえるというよりも、認知症の方によく見られる怒りをや和らげることを期待した方剤です。怒りの緩和によって、日常の生活がしやすくなることは見込まれますが、認知症の原因を積極的に改善する効果は弱いように思います。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

腰痛、膝痛、足のしびれ痛など、『いたみ』でお悩みの方が多くいらっしゃいます。特に晴天から急に雨になったり、どんより曇る日への変わり目には痛みがつらくなる様子。

鎮痛剤やシップ剤は、熱をうばい炎症を抑えてくれます。急性期で炎症がひどいときや、じっとしていても痛いときには有効です。ただ、ある程度時間が経って、動くときだけ痛みを感じるような場合には逆効果。そのような段階に入ったら、ほどよく温める方がよいようです。

その切り替えの目安は、お風呂に入って温まったときに気持ちいいなと感じるかどうか。気持ちいいと感じるようになったら温めると良いようです。

漢方薬も効果的です。たとえば、骨折や打撲、捻挫などを起こしたばかりの時には、熱をとり血流をよくすることが大切。腫れと痛みが早く引きます。

慢性化した場合には、気血の通りを良くすることが大切。必要に応じて活血剤や利水剤をあわせると効果がアップします。体質に合わせて気を補ったり腎を補うと、痛みの改善だけでなく体質改善にもつながります。

この急性期・慢性期の考え方は、ぎっくり腰の場合にも適用できます。

痛み・炎症は治癒反応の1つ。消炎鎮痛剤を長く続けて、熱を冷まし炎症を抑えてしまうと、その治癒反応をとめることになってしまい症状が長く続いてしまう事がにつながります。また、化学物質自体交感神経を興奮させるので、血流が悪くなってしまうことも、症状を長びかせる根拠の1つ。緊急の場合は良いにしても、長く続ける事には疑問があります。

『いたみ』克服のために、自分が本来持っている治癒力を高めて、治す機能を活性化してくれる漢方薬を上手に使う事をお勧めします。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

薬用人参で頭がすっきりすることをご存知でしょうか?

頭がすっきりする物質として、カフェインが知られています。カフェインはコーヒー、紅茶、緑茶などに含まれています。それらを飲むと30分くらいで眠気がスッキリするのは、カフェインの効果です。

ただ、カフェインには功と罪があります。例えば1日5杯以上コーヒーを飲み続けると癌のリスクが高まる事や、カフェインを取り続けているとやめたときに禁断症状があらわれることが知られています。

そこで注目すべきは薬用人参。朝鮮人参や高麗人参などともいわれることがあります。薬用人参には疲労回復、精神安定など様々な効果がわかっていますが、頭がスッキリすることでも知られています。そして、依存性ややめたときの禁断症状の心配がありません。

仕事で頭が疲れてやるきが出ないとき、眠くて調子が出ないとき、元気が無くてプチウツな感じな時、このような時には、薬用人参製剤を飲むと良いと思います。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

人前で話すときに、手に汗をかいたり足が震えたり、心臓がドキドキしたり、顔が赤くなったり頭が真っ白になったり・・・。いずれも緊張することで起こる身体の反応です。これらを専門的な領域でみると、自律神経系の症状となります。怖いときや不安な時に起こる症状と同様です。

生命活動を司る自律神経には、交感神経と副交感神経があります。緊張すると交感神経が優位に。あがり症の人はそれが過剰になることで、自律神経系の症状が出ます。

自律神経は、何かをしようとするときに優位になる神経。ですから、あがり症の人でなくても人前で話しをするときには優位になっています。したがって、誰でも緊張するということ。人前で上がるということは特別なことではないのです。

とはいっても、緊張するとどうしてようか分からなくなることも。そんな時には、おもいっきり腹式呼吸をしましょう。口を軽く閉じて、お腹にためるような感覚で鼻からゆっくり空気を吸い込みます。そして、できるだけ長くゆっくり吐きます。これを2~3回繰り返すと、優位になった交感神経が落ち着き、リラックスできます。逆にリラックスしすぎて力が抜けすぎてしまったら、手をギュッと握っていい意味での緊張を取り戻しましょう。

緊張しないためには、漢方薬も有効です。身体のタイプに合わせて漢方薬を上手に服用することで緊張を上手に和らげることが出来ます。

      ~薬剤師 鳥居英勝~

漢方薬「抑肝散」に、アルツハイマー症状の原因と考えられる脳の神経細胞死を抑える効果があることが、大阪大学の研究でわかったとのことです。

抑肝散は子供の夜泣きや疳の虫、神経が高ぶっての不眠などに使われてきた漢方薬。近頃では「認知症の方のイライラ解消」にも使われています。

これまでも、抑肝散は幻覚や妄想などのアルツハイマー周辺症状に効果があるとして使われていました。今回の研究報告で抑肝散には「アルツハイマー自体の予防効果がある」ことがわかったことは、アルツハイマーで悩む方には不安解消の一助になるかも知れません。

      ~薬剤師 鳥居英勝~